My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「このイディルはね、オルタードのお陰でみんな安心して暮らせているの」
「お蔭で?」
そのとき、急に視界がぱあっと明るくなった。思わず足を止め海の方を見れば丁度水平線から朝日が顔を出すところで、その美しさに一時目を奪われる。
キラキラと輝くコバルトの海には、すでに漁に出ているのだろう船が何隻か見えた。そして、昨夜はわからなかった町の全貌が見渡せた。確かに小さいけれど、とても綺麗で穏やかな港町だ。
(あれ……?)
そういえばグリスノートたちの乗っていたあの大きな海賊船が見当たらない。彼らがここにいるのだからどこかに停泊しているはずなのに。
そんな疑問が頭を掠めたとき、私と同じように立ち止まり町の方を眩しそうに見下ろしていたリディが話を再開した。
「イディルはね、大戦で故郷を追われた者たちが集まって出来た町なの。オルタードもその一人」
大戦で故郷を追われた者たち。――セリーンの故郷であるエクロッグの名を思い出す。