My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
と、そんなグリスノートの方を見上げリディが続けた。
「兄貴はあんまり手荒なことはしてないって言うけど、船を襲うわけだからどうしたって傷つく人は出るだろうし。カノン達だって兄貴たちに襲われて大変だったでしょ?」
「あぁ、うん」
「だから、私は兄貴には海賊なんて早くやめて欲しいって思ってるの」
「遅ぇぞお前ら!」
再び怒鳴り声が降ってきたのは、丁度そんなときだった。
「口を動かしてねぇで足を動かせ足を! グレイスが今か今かと待ってんだよ!」
そしてまた負けじと怒鳴り返すリディ。
「煩いわね! 仕方ないでしょ、カノンたちはまだここを登り慣れてないんだから!」
「ったく、とにかく早くしろ!」
そうして彼の姿は仲間と共についには見えなくなってしまった。あそこがもう頂上なのだろうか。
ふぅと溜息をひとつ吐いて、リディがこちらを振り向いた。
「ごめんね、ほんと煩い兄貴で。足元に気を付けてゆっくり行きましょう」
「はは、ありがとう」
私は苦笑しながらお礼を言って、再び階段を登り始めたのだった。