My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「やっと、着いたぁ……!」
最後の段を登り終えて、私はそう歓声を上げ直後その場に座り込んでいた。
息を整えながら海の方を見ると日はもう完全に水平線を離れ私たちを明るく照らしていた。
大変だったけれどとても清々しい気分だ。誰かさんの呆れたような溜め息が聞こえた気がしたけれど、それでも気分は爽快だった。
「大丈夫?」
リディのそんな心配そうな声がして顔を上げようとしたときだ。
「漸く来たか。遅ぇな」
そんなイラついた声が海とは反対の方から聞こえてきて振り返る。
岩山の頂上はごつごつとした地面と少しの緑が広がっていた。
そこにポツンとひとつ小屋が建っていた。その前でグリスノートが仁王立ちしてこちらを睨んでいる。仲間の姿はない。
(あれが、アジト?)
確かに見晴らしは良さそうだけど、想像していたアジトのイメージより大分小さくて少し拍子抜けする。
仲間たちとオルタードはあの中にいるのだろうか。