My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
(この格好のままで良かったかも……)
その視線を見て見ぬふりをしながらグリスノートの後を追っていくと、結局砂浜まで下りてしまった。
下りとは言え脚はもうパンパンで、腿に手を着きまたもはぁはぁと息を吐いていると、そこでグリスノートが振り返った。
「長の前に、グレイスに会ってもらうからな」
「あぁ。わかっている」
セリーンが頷くと、彼は更に船へと続く桟橋へと向かった。
(ってことは、グレイスはまだ船の中にいるんだ)
てっきりこのアジトのどこかにあるグリスノートの家にいるのかと思ったが、そういえばリディの家に彼の部屋があったことを思い出す。全然、帰っていないようだったけれど。
彼について桟橋を渡りながら、まさかまた乗ることになるとは思わなかった海賊船を見上げ、その大きさに改めて圧倒される。青空よりも近くにあの海賊らしくないスカイブルーの旗が静かにはためいていた。