My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
そして再び海賊船に乗り込んだ私たち。グリスノートはやはりあの部屋に向かっているようだ。
「ブゥ?」
背後でラグの声がして振り向くと、先ほどまで彼の頭にいたブゥが私の横をすり抜けて行くところだった。
ブゥはセリーンとリディも追い越し、自室の前に立つグリスノートのすぐ後ろについた。
グリスノートがそれに気付いて瞬間ひやりとするが、彼は小さく舌打ちをしただけで視線を前に戻し自室の扉を開けた。
「グレイス、待たせたな」
グリスノートがそう声を掛けるのと、ブゥがそんな彼の傍らをすり抜け部屋に入るのはほぼ同時だった。――そして。
――!
次の瞬間、アジト全体に響き渡るような美しいソプラノが私たちの鼓膜を震わせた。