My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
聞き覚えのあるその歌声に息を呑み駆け足で部屋の中を覗き込めば、ブゥとグレイスが昨夜のようにあの止まり木の上で並んでくっついていた。
二匹とも目を細めとても幸せそうで、こちらの顔もつい緩みそうになる。
そういえば、いつもならブゥはラグの髪の毛にぶら下がってとっくに寝ている時間だ。
(ブゥもやっぱり、グレイスとの再会を楽しみにしていたのかな)
「ねぇ、あれのどこが狂暴なの? とっても可愛いんだけど」
私のすぐ前でリディが少々興奮気味に部屋の入口に立ち尽くすグリスノートに声を掛けた。だがグリスノートは急にその場にがっくりと膝を着くと、なんとか聞き取れるほどのか細い声を出した。
「やっぱりか……やっぱりそうなのかよグレイス……」
「兄貴?」
「俺の……俺のグレイスが、どこの馬の骨ともわからねぇへんちくりんなモンスターに心を奪われちまったあぁ~~っ!!」
頭を抱え、まるでどこかの頑固親父のような台詞を絶叫するグリスノート。