My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5

 そんな彼の背中を見下ろしついポカンと口を開けていると、リディが焦るように私を見た。

(え?)

 だがその視線はすぐにお兄さんの方に戻る。

「ちょっと兄貴やめてよ恥ずかしい!」
「うるせぇっ! この悔しさがお前にわかるか!」
「わからねぇわよ! いいから早く立って!」

 腕を引っ張りなんとかお兄さんを立たせようと奮闘しているリディ。
 そんな中私はそっとラグの方を振り返る。彼はただじっとブゥたちの方を見つめていて、でも私の視線に気付きなんだよと言いたげに眉を寄せた。

「ううん、なんでもない」

 私は慌ててそう首を振る。

(ラグは寂しくないのかなって、思ったんだけど……)

「お前の気持ちはわかったぜ、グレイス」

 そんな低い声に向き直ると丁度グリスノートがふらりと立ち上がるところだった。

「兄貴、お願いだからもう」

 心配そうな妹の傍らで彼は俯いたまま私たちの方をゆっくりと振り返り、そして覚悟を決めるように勢い良く顔を上げた。

「仕方ねぇからあのモンスター、俺が貰ってやるよ!」
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