My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5

「しかしまさか海賊になっているとはな」

 セリーンが言うとオルタードさんはまだ彼女の顔をしっかりと見ることが出来ないのか、俯いたまま淡々と話し始めた。

「この脚と目、そして故郷を奪われた私を受け入れてくれたこの街を守るために」
「奪う側に回ったわけか」

 溜息交じりに続けたセリーンにオルタードさんは息を呑み、そして頷いた。

「はい」
「そうか」

 重苦しい空気が流れる中で声を上げたのはリディだった。

「オルタードを悪く言わないで! 確かに海賊は悪いことだけど、オルタードがいなかったら私たちは」
「いや、悪く言うつもりはない。ただ、皮肉なものだと思ってな。……身体は大分悪いのか」

 セリーンが問うと、彼はゆっくりと頭を振り自嘲するように笑った。

「もう海には出られそうにありません。今はなんとか見えているこの右目も大分耄碌しました。使い物にならなくなる前に、またその見事な赤毛を見られて良かった」
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