My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
そうしてオルタードさんは漸く顔を上げ、セリーンを見つめた。
「セリーヌお嬢様は、」
「その呼び方はもうやめてくれ。もうお嬢様という歳ではない。名も今はセリーンと名乗っている」
「セリーン……様は今何をされて、そのお姿は」
「ああ、今は傭兵をしている。驚くなよ。これでもクラス1stだ」
「お嬢様が傭兵……本来ならばフィッツジェラルド家を背負って立つお方が……」
ショックを受けた様子のオルタードさんにセリーンは苦笑する。
「そう言うなオルタード。今のこの生き方もなかなか気に入っているんだ」
「セリーヌお嬢様……」
と、そのときハっと鼻で笑うものがいた。
それまでグレイスのすぐ傍らで黙って見ていたグリスノートだ。
「オルタードが執事ねぇ」
そんなグリスノートをじろりと睨み上げるオルタードさん。その眼光はセリーンに向けていたものとはまるで違う。――海賊の元頭の眼だ。