My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
捜しにいく手間は省けたけれど、まだ頗る不機嫌な様子だ。
ずんずんと中に入って来た彼はラグの手から本を奪い、大事そうに本棚に仕舞った後でこちらを振り返った。
「オルタードとは感動の再会を果たしたんだ。もうここにゃ用はねぇだろう、さっさと出てけ! それともなにか? そのモンスターを置いてく気になったかよ!」
「あの! セイレーンについてあなたに訊きたいことがあるんです!」
思い切ってそう切り出すと、グリスノートの眉がぴくりと跳ね上がった。
セイレーンの情報を知りたがっていた彼なら、エルネストさんのこと、金のセイレーンのことも何か知っているかもしれない。――しかし。
「俺はこれ以上あんたらと話す気はねぇ」
「でも、あの」
「いいから早く出てけ!」
その怒声に押されるように私たちは船長室から追い出されてしまった。
扉が閉まる直前、
「お前のお蔭でオルタードと再会出来た。ありがとう」
セリーンがそう声を掛けるが、舌打ちひとつ残しバタンと船長室は閉ざされた。