My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「駄目か」
セリーンとほぼ同時に溜息が漏れる。
――グレイスのこともあり、私たちは完全に嫌われてしまったようだ。
(不機嫌な理由は他にもありそうだけど)
「ここで待っていても仕方ない。一先ず外に出るか」
セリーンの言葉に頷く。
船長室の前を離れ、階段に向かいながら私は口を開く。
「……私が、歌ってみる?」
「それは駄目だ」
間髪入れずに答えてきたのは前を行くラグだ。
「でも、そうすればもしかしたら話聞いてくれるかも」
セリーンがふむと頷き私の頭を見た。
「まぁ、そうして帽子を被っていれば銀のセイレーンだということは隠せそうだがな」
「あ、そうだよね」
私は被っている帽子に手を触れる。私ひとりまだ変装したままだ。でも。
「駄目だ」
もう一度、振り返ったラグに強く睨まれ私は口を噤んだ。