My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
(確かにちょっと怖いけど……)
グレイスの歌声にデレデレになっている彼を思い出して小さく首を振る。
――でも、彼が私の歌を気に入るどうかはわからない。
(むしろ、そんな歌声セイレーンじゃねぇって、もっと嫌われちゃう可能性もあるんだ)
ラグの言う通り、やはり歌うのはやめておいた方がいいかもしれない。
甲板に出ると一瞬眩しさに目がくらんだ。
岩山に囲まれ丸く見える空は雲一つなく真っ青で、気温も先ほどより大分上がっているように感じた。
「兄貴と話せた?」
そんな高い声に振り向けば、リディが丁度船に乗ってくるところだった。
私は苦笑しながら首を振り答える。
「追い出されちゃった」
するとリディはやっぱりというふうに溜息をつき、お兄さんのいる扉の向こうを睨んだ。
「普段ならセイレーンって聞いただけで目の色変えて飛びつくくせに」