My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「……帰らなきゃならない場所?」
リディの視線がこちらに戻ってきて、ハっと我に返る。
「そ、そうなの! そのために今旅をしていて、だから、ごめんなさい」
頭を下げると、リディの手もゆっくりと離れていった。
「そう……こっちこそ、ごめんなさい」
顔を上げるとしゅんとした顔のリディがいて、なんだか申し訳なくなる。
でもラグの言うとおり、私は元の世界に帰らなきゃいけない。
(この世界で誰かと結婚なんて、絶対にありえない)
――そう、絶対に。
「この町に、他に合いそうな女性はいないのか?」
セリーンの問いにリディは首を横に振る。
「皆年上だし、兄貴のことは皆子供みたいに思ってるし」
「外で見つけてくるしかないわけか」
「オルタードが、海賊の頭なら自分の嫁くらい自分で奪ってこいって」
セリーンが大きく息を吐いた。