My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
リディは口を尖らせ続ける。
「町の皆は面白がっちゃってるし。見たでしょ? さっきここに下りてくるとき、皆じろじろこっち見てきてさ」
私たちに注がれたあのニヤニヤとした視線を思い出す。
「あれはそういう視線だったのか」
「なんか兄貴が可哀想で。……だから、カノンが兄貴のお嫁さんになってくれたらって思ったんだけど」
再び上目遣いで見つめられてぎくりとする。
「で、でも、お兄さんはきっと私なんて嫌がると思うな」
苦笑しながら言うとラグの溜息が聞こえた。
「お前が、あのじいさんを説得したらいいんじゃねぇか?」
声を掛けられたセリーンが目を瞬いた。
「私がか?」
「あの調子じゃ、お前の言うことなら聞きそうじゃねぇか」
パァっとリディの顔が期待に輝くのがわかった。