My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
そして船から降りた私たちはリディに案内されオルタードさんの家の前にやってきた。
彼の家は岩山ではなく桟橋を降りて船の裏手側に回った海岸にぽつんと建っていた。まるで船の見張り番だ。
セリーンはオルタードさんとふたりで話がしたいと言い、リディと共にその家の中へと入っていった。
「……」
沈黙が訪れて、入り江に打ち寄せる静かな波音が耳に入ってくる。
ラグの横顔を見上げると、その髪の結び目でブゥが揺れていた。
「ねぇ」
海と同じ深い青が私を見る。
「さっきブゥが戻って来なかったら、本当にお別れするつもりだったの?」
するとラグは私から視線を外し、そのまま目を伏せた。
「こいつがあの鳥のそばにいたいって言うなら、それが一番いいだろう」
先ほどと同じ素っ気ない答えにムっとする。
「ラグはそれで寂しくないの?」
「選ぶのはこいつだろ。オレの気持ちは関係ない」