My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「そんなこと……! ブゥだって、ラグに行くなって言われたらきっと嬉しいに決まってるよ」

 なんだか無性に腹が立って知らず声が大きくなっていた。
 そんな私を冷たい瞳が見下ろす。

「それでも、結局は向こうを選ぶかもしれねぇだろ」
「でも、」

 と、そのとき目の前の扉が開いてリディが出てきた。
 彼女は私たちの微妙な雰囲気を察したのか、首を傾げた。

「何かあった?」
「ううん、何も」

 私は慌てて手を振り笑顔を作る。……リディにブゥの話をしたらまた気にしてしまうだろう。
 ラグももうこちらを見てはいなかった。

「オルタードさんどうだった?」

 訊くとリディは短く息をついて今閉めたばかりの扉を見つめた。

「話はこれから。……説得されてくれたらいいんだけど」
「兄貴の方は、いつ船から出てくる」

 ラグが船の方を見上げながら訊くとリディもその視線を追いかけ答えた。
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