My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「あー、多分寝ちゃったと思うから大分日が傾いてからでないと出てこないと思うわ」
ラグは小さく息を吐いた。
(そっか、明け方帰ってきたばかりだもんね)
今この場がこんなに静かなのも、海賊たちが皆寝てしまったからかもしれない。
「今夜は昨日の酒場にみんな集まると思うし、兄貴も顔出すはずだからもう一度話すならそのときがいいかも」
「少なくとも、今日海に出ちまうことはないわけだな」
「そのはずよ」
リディの答えにラグは頷いた。と、そんなラグに今度は彼女が訊ねた。
「あなたはなんでさっきの、えっと、何て名前だったかしら。金のセイレーンの人を探してるの?」
「……」
案の定黙ってしまったラグ。でも私が下手に答えるわけにもいかず横目で見守っているとリディは更に首を傾げた。
「あなたもやっぱりセイレーンに興味があるの?」
「セイレーンに興味があるわけじゃねぇ」
不機嫌な顔で、でもそこははっきりと答えたラグに少しだけ胸が痛む。