My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
それから10分ほどが経った頃、再び扉が開きセリーンが出てきた。
私たちの視線が集中する中、彼女は首を横に振った。
「すまん。やはり条件を変えるつもりはないらしい」
皆の溜息が重なる。
「所詮、私もここではただの余所者だからな。……だが」
そう続けたセリーンにリディが身を乗り出す。
「別の条件も、聞けはした」
「別の条件?」
そう繰り返した私の方をちらりと見て彼女は続けた。
「そんなにセイレーンに拘るのなら、一度俺にその歌声を聞かせてみろと」
「え」
「なにそれ!」
思わず漏れた私の声はリディの怒声に掻き消えた。
「それで、このイディルを出てまで探す価値があるものなら認めてやると」
「まだ嫁子供の方が現実的じゃないの!」
「まぁ、条件というより皮肉のつもりなのだろうな」
リディはがっくりと肩を落とした。
(皮肉のつもり……)
本来なら、今この世界でセイレーンを見つけることは難しい。でも……。
「セリーンさん、ありがとう。オルタードと話してくれて」
リディはそう言って、再び笑顔を見せた。
「ねぇ、そろそろお腹空かない? お礼とお詫びに朝ご飯ご馳走させて!」