My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
18.条件の意味
それから私たちはもう一度岩山を上り下りし、リディの家へと戻ってきた。
「お疲れ様。ごはん出来るまで兄貴の部屋で休んでて」
リディは私の様子を見てそう言ってくれた。
苦笑しながらお礼を言って、私たちは再びグリスノートの部屋に入った。
昨夜も何もない寂しい部屋だと感じたけれど、きっとグリスノートは普段あの船長室にいて殆どここに帰ってくることがないのだろう。
そう考えたら窓際にぽつんと置かれた可愛らしい人形が、なんだか余計に寂しそうに見えた。
ベッドに腰掛けてふぅと一息ついてから、ここに戻るまでの間ずっと考えていたことをふたりに話そうと顔を上げる。
「ねぇ、私」
「駄目だ」
「……まだ何も言ってないんだけど」
ラグを見ると、彼は不機嫌そうに私を睨み返していた。
「どうせ、あのじいさんの前で歌うって言うんだろ」