My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
――誰が行かせるかよ。
そんな台詞を思い出してつい顔が緩んでしまう。
改めてあのときのお礼も言わなきゃと思っていると、ラグが先に口を開いた。
「あの野郎とは今夜もう一度話す」
「今夜?」
怪訝そうに訊き返したのはセリーン。
そうだ。先ほどリディとその話をしたとき彼女はいなかったのだ。
「リディがね、さっき言ってたの。リディが働いてるあの酒場に今夜海賊たちみんな集まるって」
「そういうことか。確かに酒が入れば少しは口も軽くなるかもしれないな」
どう見ても同じ年くらいだけれど、きっとグリスノートもお酒を飲むのだろう。
ひょっとしてリディも飲めるのだろうか……そんなことを考えていたときだ。
「先ほどはリディアンの手前言えなかったが、オルタードの例の条件。あれは彼女のためを思ってのことらしい」
「え?」
セリーンがリディのいるドアの向こうを見つめながら続ける。