My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
もぐもぐと口を動かしながら私は首を傾げる。
「よくオルタードに言われたわ。例え信頼できる仲間であっても、禁欲的な生活が長く続けば人間何を考えるかわからないって」
漸くその意味がわかって口の中のものをごくりと飲みこむ。
「それで狭い船内で喧嘩とか起きちゃったらそれこそ大変でしょ?」
「戦場と似たようなものだな」
セリーンが深く納得するように頷くとリディは小さく苦笑した。
「そうかも。……昔はなんで兄貴だけって納得いかなかったけど、その意味を理解してからは乗りたいとは思わなくなったわ。そんな理由で皆のお荷物にはなりたくないもの。そういうわけで、女は船に乗れないの」
私はこくこくと何度も頷いた。予想の斜め上をいく理由に咄嗟に何も言えなかった。
「……まぁ、例外もあるけどね」
――?
ぼそっと小さく付け足したリディは半笑いのような、なんとも言えない複雑な表情をしていて、でも私と目が合うと何でもないと首を横に振りまた料理を口に運んだ。