My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
私たちが乗った船が海賊に襲われたなんて知ったらきっと文字通り飛んで来そうだけれど、あの船は今頃まだ航海中のはず。アルさんの耳に届くのはまだ何日も先だろう。
(耳に入ったとしても、この町にいるってことはわからないだろうしなぁ……)
「エスノさん、兄貴のお嫁さん候補はカノンなの!」
「えっ」
突然リディに指をさされてびっくりする。そのエスノさんという女性は私を見て目を瞬いた。
「え? あんた女の子なのかい? そんな格好してるからてっきり男の子なのかと思ったよ。悪かったねぇ」
「い、いえ」
「そうかいあんたが! いいねぇ、グリスノートにぴったりじゃないか!」
「でしょう!?」
「いえ、あの、私には目的があって……っ」
また朝と同じ説明をしながら、どっと冷や汗をかいてしまった。
その後手伝いにやってきた女性は総勢10人ほど。中にはまだ小さな女の子もいて驚いた。その子は私と一緒に簡単な作業を手伝ってくれた。
空と海が夕焼け色に染まり厨房が良い香りに包まれた頃、店の外にもテーブルと椅子を出し(そこはラグも渋々手伝っていた)、いよいよ海賊たちの宴が始まろうとしていた。