My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「それにまだ料理も全部出ていないようだしな」
確かにテーブルにはまだ飲み物と簡単につまめるような料理しか出ていない。
「現れなかったら、こっちから出向くだけだ」
言ってラグはお酒をぐいと呷った。
「そうだね」
「なぁ、長の話をしてくれよ姉ちゃん! 長の主だったんだろ!?」
近くの席のすでに顔を赤くした男がセリーンに話しかけてきた。やはりそのことも皆知っているようだ。小さな町なだけあって噂が広まるのも早いのだろう。
「あぁ、オルタードはとにかく厳しくてな、私はよく叱られてばかりいた」
セリーンが懐かしそうにそう話しはじめ、近くにいた人たちが皆興味津々といった顔で耳を傾けた、丁度そんなときだった。
「遅ぇーぞ、頭ぁ!」
「やっと来たかー!」
そんな声に振り向けば、グリスノートがひとり暗がりから歩いて来るのが見えた。その肩には白い小鳥グレイスが乗っている。ちなみにブゥはラグの服のポケットでまだお休み中のはずだ。