My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
かったるそうに皆に手を上げる彼に、リディの怒声が飛ぶ。
「おっせーわよ兄貴! 料理が冷めちゃうじゃない!」
「かしらぁ―!」
「きゃー!」
そんなグリスノートの元へ嬉しそうに駆けていくのは先ほどの子供たちだ。グリスノートは満更でもない顔でその子たちに手を引かれ、先ほどの中央の席へと向かった。
(へぇ~、子供たちにも人気なんだ……)
怒った顔ばかり見ているからか、なんだか少し意外だった。
彼がリディから並々とお酒の入ったグラスを受け取ると、先ほどまでの喧騒が嘘のように町中がしんと静まり返った。ザザン……と波音が耳に入ってくる。
グリスノートは一度ふぅと息を吐いた後で、グラスを高く掲げ大声を張り上げた。
「今回の仕事は失敗に終わったが、次は必ず大量の戦利品持って帰るぞてめぇら!」
「おおー!!」と思わず耳を塞ぎたくなるような大歓声が上がる。
そしてグリスノートのすぐ隣にいた男がそれに続いた。
「そんじゃ改めて、海賊団ブルーと、俺たちの頭に乾杯ー!」
「かんぱーい!!」
グラス同士がぶつかり合うけたたましい音が辺りに鳴り響いた。