My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
向かう先にいるグリスノートはとても楽しそうに仲間たちと談笑している。
あの機嫌の良さならきっと、今度は話を聞いてくれるに違いない。
「あ、丁度いいところに来たよ。カノン!」
「え?」
名を呼ばれそちらを振り向けば、先ほど厨房で話したエスノさんが店先で私に手を振っていた。
こちらも笑顔で手を振り返すと彼女はそのまま駆け寄ってきて私の手を取った。
「ちょっとこっちに来ておくれ」
「へぇっ!?」
驚くほど強い力で引っ張られ、私はつんのめりそうになりながら店の方へと連れていかれる。
慌てて振り返ればセリーンとラグも突然のことに驚いた様子で私を見送っていて。
連行されたのは店内、そして先ほどまでいた厨房だった。
その場には先ほど料理を作っていた女性たちが皆集まっていて、瞬間また何か料理のお手伝いだろうかと思った。
(でもリディがいない……?)
そう不思議に思った時だ。
「わっ」
いきなり伸びてきた手に被っていた帽子を取られ思わず悲鳴を上げる。