My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「カノン、どうし……!?」
そのとき厨房に顔を覗かせたセリーンがそんな私を見て目を丸くした。
「セリーン……」
「行こう、お姉ちゃん!」
「ぅえ!?」
今度はその女の子に手を引っ張られ、他の女性たちに背中を押される形で私はセリーンの前を通り過ぎていく。
すぐ店先にいたラグがぎょっとした顔をして、他の皆の視線も私に集まっているのがわかった。元々火照っていた顔がどんどん熱くなっていく。
「カノン!?」
そんな素っ頓狂な声に視線を送れば離れた席にいたリディが私を見てやっぱりびっくりした顔をしていて。
「はーい、到着~!」
そんな可愛い声とともに小さな手が私から離れた。
(――!?)
グリスノートがぽかんと口を開けて突然目の前に現れた私を見上げている。