My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
確かに話したかった相手だけれど、今この状況でどう切り出せばいいだろう。皆が見ている。ラグたちはいない。顔が熱くて頭がぐるぐるして考えが纏まらない。――と。
「みんなー! 朗報だよ!」
私のすぐ真後ろで大声が上がった。エスノさんの声だ。
「頭に待望の嫁さんが来てくれたよー!!」
「!」
トンっと背中を押され、それはそんなに強い力ではなかったはずなのに足に力が入らなくなっていた私はそのままグリスノートの方へと倒れこんだ。
「ぅお!?」
「~~いったぁ……っ」
格好悪く顔面から突っ込んでしまった私はツーンとする鼻を押さえながらゆっくりと顔を上げ、すぐ眼前にグリスノートの顔があることに気が付いた。
その不思議な色の瞳が大きく見開かれていくの見ながら、こちらはサーっと血の気が引いていくのを感じた。――おそらく彼は無様に倒れてきた私を受け止めてくれたのだろう。
グリスノートの腕の中で、私はここに来て漸く、この最悪な状況を理解した。
――次の瞬間、辺りは大歓声に包まれた。