My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
私は急いで彼から離れベッドから降りるとセリーンたちの方へと駆け寄った。
「カノン、無事だな」
「え? あ、うん!」
私が頷くとセリーンは優しく微笑んで軽く抱きしめてくれた。
ラグもほっとしたように短く息を吐いてからもう一度グリスノートを睨みつけた。
グリスノートはやれやれというふうにベッドに両手をついてふんぞり返り、大きく足を組み直した。
「で? この俺に何か話があるんじゃねーのかよ」
「え?」
「さっき言っただろうが。聞こえてなかったのか?」
「……あっ!」
思い出して声を上げると、ラグがこちらを睨むように振り返った。
「なんの話だ」
「あ、えっと、セイレーンの話が聞きたいなら、今だけ合わせろって、言われて……」
グリスノートが満足げな顔で頷く。
そうだ。なんだかかなり回り道をした気がするけれど、漸く本題に入れるのだ。