My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「銀のセイレーンに、どっかの国の王子が殺されたって話を聞いたことねぇか?」
「あぁ」
はっきりと肯定したのはラグだ。
私も声は出なかったが、頷く。
――それは確か、この世界に来たばかりの頃にラグから聞いた話だ。
「あれは王子じゃねぇ。金のセイレーンのことだ」
それからグリスノートは神妙な顔つきで、彼の知る“金のセイレーン”の伝説を語ってくれた。
◆◆◆
世界を破滅へと導く“銀のセイレーン”。それと対をなす“金のセイレーン”は、この世界を創り出したとされる存在だ。
金のセイレーンは長命で、歌を使いなんでも創り出すことが出来た。――海も大地も、人間も。
金のセイレーンのもと、この世界は歌であふれていた。
だが、“銀のセイレーン”がこの世界に現れてしまった。
金のセイレーンはこの世界を守るために銀のセイレーンと戦い、銀のセイレーンはこの世界から消滅したが、金のセイレーンもその戦いで力を使い切り、伝説とともに封印された。
◆◆◆
「――これが、俺が知る金のセイレーンの伝説だ」
「カノン、大丈夫か?」
気が付いたら、後ろにいたセリーンに支えられていた。
足に力が入らなかった。
「ご、ごめん」
「いや。横になるか?」
「おいおい、そんなにショックだったかよ」
グリスノートが意外にも心配そうな声でベッドから立ち上がった。