My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
そうだ、ツェリウス王子の時とは状況が違う。私が楽譜を読めるとわかったら、また怪しまれてしまう。
私は再び焦って言い訳を考える。
「あ、えっと、昨日船から借りた書物にそんな記号があったから、そのことかなって」
「オレが、わかるかもしれねぇ」
私の言葉を遮るように言ったのはラグだ。
(ラグ?)
「あんたが?」
グリスノートとラグ。お互いを睨みつけるような視線がぶつかる。
「その書物を見せてくれねぇか?」
それは到底人にものを頼む態度ではなくて、ハラハラした。
多分ラグは私を助けてくれたのだろうけど。
「そ、それって、やっぱり船の方にあるんですか?」
もう一度私はグリスノートに声を掛ける。
だが彼はラグからは視線を外さずに答えた。
「いや、そいつだけはこの部屋だ」
「この部屋に?」