My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5

 よりによってそんなことを言い出したグリスノートに「バカー!」と叫びそうになる。

「そしたら、これ見せてやるよ」

 完全に面白がるようにグリスノートは手に持った本を顔の横で揺らしてみせた。
 押し黙るラグ。でもその両方の手がギリギリと握られているのを見て焦る。

「あ、あのっ」
「わかった」
「!?」

 まさかの了承にびっくりしてしまう。

(いいの!?)

 ラグは深呼吸ひとつしてから、優しく囁くような声を出した。

「……すまない、少しだけ力を貸してくれ」

 ニヤニヤと楽しそうにそれを見物しているグリスノート。――だが。

「風を此処に!」

 ヒュオッ、と風を切るような音がしたかと思うと、

「うおわっ!?」

グリスノートの体が50センチほど宙に浮き、すぐにそのままドスンっと落下した。
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