My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「いっ……てぇ! くっそ、何しやがる!?」
「てめぇが見せろって言ったんだろうが」
鼻で笑うラグ。だが直後その身体がみるみる縮んでいく。
それを目の当たりにして、腰を摩っていたグリスノートがぽかんと口を開けた。
「マジで昨日のガキだ」
「んじゃ、これ見せてもらうぜ」
「あ!?」
気付けばラグの手には例の古い書物が握られていた。
「おまっ、いつの間に!」
ラグがその怒声を無視し表紙を開きながらこちらに戻ってくる――が。
「この時を待ちわびていたぞーー!」
「ぎゃあああああーー! そうだったーー!!」
待ち構えていたセリーンに思いっきり羽交い絞めにされて小さなラグは絶叫を上げた。
(あ、そうだった)
私もラグと同じくすっかり忘れていて、久しぶりに見るその光景になんだか懐かしさすら覚えた。