My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「すぐにだぞ、わかったな!」
「わかった!」
ラグがイライラしつつもはっきり答えるとグリスノートはふんっと鼻を鳴らし部屋を出て行った。
階段を下りていく足音を聞きながら私はふぅと息を吐く。
と同時にセリーンがふふっと甘く笑った。
「名演技だったな?」
「くっつくな! ――で、何かわかったんだな?」
ラグがセリーンを押しやりながらこちらを振り向いた。
私は何度も大きく頷いてから、やっとの思いで口を開く。
「埴生の宿」
「あ?」
「これ、『埴生の宿』っていう歌なの。前にドナの家と、フェルクの泉でも歌った、私の大好きな歌!」
――そう。見てすぐにわかった。それは間違いなく『埴生の宿』の楽譜だった。
「あぁ、あの美しい歌か」
セリーンも覚えていてくれたみたいだ。私は頷き更に続ける。
「それと、その文字だけど」
「読めるのか!?」
驚くふたりに、私は震える声で答えた。
「これ、私のいた世界の、私の住む国の文字なの」