My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
グレイスを見送るようにふよふよと漂っていたブゥがこちらに戻ってくる。
「ということは、異世界の文字ということか。わからないはずだ」
ブゥはラグと少し迷った後で私の頭に乗っかった。
「で、なんて書いてある」
「『埴生の宿』って」
確かに、そう漢字と平仮名ではっきりと書かれていた。
「歌のタイトルかよ」
拍子抜けしたように肩を落としたラグに私は楽譜を指さしながら言う。
「あと、その下に『銀のセイレーンのお気に入り』って書いてあるの」
「銀のセイレーンの?」
同時に声を上げたふたりに、私はブゥが落ちないよう気を付けながら頷いて続ける。
「この銀のセイレーンって、多分ドナのおばあちゃんが会ったっていう銀のセイレーンじゃないかな!」
自分が酷く興奮しているのがわかる。
ドナのおばあちゃん、ノービスさんが友達になったという日本人の銀のセイレーン。ドナの口から出た、たどたどしい日本語の歌を思い出す。
「……どんな意味の歌なんだ、これは」