My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
私はその優しいメロディを思い浮かべながら言う。
「故郷を思う歌。やっぱり我が家が一番っていう歌なの」
「銀のセイレーンが故郷を思う、か」
セリーンが呟くように言ったそのとき、ラグの背が急に伸びた。セリーンが素早く腕と脚を開いたせいでラグはそのままセリーンの脚の間にどすんと尻餅をついてしまった。
「ってぇな! だったら最初から乗せんな!」
「ふんっ」
セリーンはそのままベッドに登ってきて私の隣に胡坐をかいた。
ぶつぶつと文句を言いながら今までセリーンがいた位置に腰を下ろすラグ。私はその隣に移動して訊ねる。
「その本、他のページには何が書いてあるの?」
するとラグはすぐにページを捲ってくれた。
「昨日見たのと同じ感じだな。楽譜ばかり、どれもあいつの名前が書いてある」
確かに、どのページも手書きの楽譜が書かれ、私の知らない文字でタイトルとエルネストさんのサインがされていた。
(多分これ、エルネストさんの作曲ノートなんだ)
――その最後のページに書かれた『埴生の宿』と日本語の文字。