My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「じゃあ、その『埴生の宿』の楽譜もエルネストさんが書いたんだよね、きっと」
「だろうな」
「でもおかしくない? さっき聞いた伝説だと金のセイレーンと銀のセイレーンは戦ったって、敵の好きな歌なんて書いたりするかな?」
ラグは難しい顔でまた最後のページに戻した。
「私ね、エルネストさんは銀のセイレーンと戦ってなんていないと思うんだ。なんとなく、だけど……」
いつも私を見る彼の瞳は優しくて、時々とても悲しそうで……。あれは敵対する相手に見せる表情じゃない。絶対に。
ラグが小さく溜息をつく。
「さっきの伝説に出てくる銀のセイレーンと、この歌が好きな銀のセイレーンはまた別って可能性もある」
「そんなに何度もこの世界に銀のセイレーンが現れてるってこと?」
また部屋が静まり返る。……色んなことがわかってきているのに、やっぱり肝心なところには手が届かない。
「……この歌、お前の世界でいつ頃出来た歌か、わかるか」