My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「だがこの町ではもう、カノンはグリスノートの嫁ということになっている」
セリーンの言葉にうっと低い声が出てしまう。
「そう、だよね……」
と、ラグが隣でパタンと本を閉じた。
「色々と手がかりは掴めたんだ。さっさとこの町を出るぞ」
「どうやって? 船もないのに」
「それに次はどこへ行くつもりだ。もうエクロッグに行く必要もなくなっただろう」
立て続けに訊かれてラグは不機嫌そうに黙った。その頭にブゥが乗るのを見て、少し癒される。
「……グリスノートがね、夢が叶いそうだって言ったの」
「夢?」
私は頷いて続ける。
「ほら、グリスノートの夢って、この町を出てセイレーンの秘境を捜しにいくことでしょ?」