My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
それにしても楽譜を見ていると、ついそのメロディを口ずさみたくなってくる。歌詞が読めなくて、今は良かったかもしれない。
ウズウズする気持ちを振り切るように私はラグの方を見る。
「歌のタイトル、一曲ずつ教えてもらっていい?」
すると彼は仕方ないというふうに小さく息をついてから私の手元を見下ろした。
「《大地》、《海》、《空》、《太陽》、《月》」
私がページを捲る毎に教えてくれるラグ。
「《雨》、《風》、《楽園》、《花》、《愛》……」
でも最後、「埴生の宿」直前のページで彼が少し躊躇するのがわかった。
「《死》」
ぎくりとする。
そういえば、笛の楽譜にもそんなタイトルの曲があった。
私は慌てて前のページに戻ってお礼を言う。
「この歌で、エルネストさんは世界を創っていたのかな」
「どうだかな。歌でこの世界を創ったなんて、そう簡単に信じられるかよ」
「だよね……」