My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「――風が」
「歌うなよ」
「! う、歌わないよ!」
……正直、危なかった。
(なんて綺麗な歌)
頭の中に流れたメロディもその楽園を描いた詞もとても美しくて、歌えないことが心底もどかしかった。
「鳥が歌い……」
そのときラグが難しい顔で呟いた。
「例のあの白い鳥のことか?」
「え?」
ラグが私を見る。
「セイレーンの楽園に、あのグレイスとかいう鳥の仲間がいたんじゃないか」
「あっ!」
私は声を上げて、ラグの頭に乗るブゥを見上げた。