My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「お酒も、カノンが全然飲めないなんて思わなくて、私自分が好きなお酒出しちゃって」
「あー……」
それを聞いて身体の不調についても合点がいった。
(ていうか、やっぱりリディもお酒飲めるんだ……)
「本当にごめんなさい!」
「ううん、もう大丈夫だよ」
「おめぇ、まさか嫁は間違いだとか皆に言ったんじゃねぇだろうな」
そう間に入ってきたのは兄のグリスノートだ。リディは私の手を離しながら辛そうな顔をした。
「あんなに皆喜んでるのに、言えるわけないでしょ」
それを聞いて思わず溜息が漏れそうになる。おそらくは真逆の意味でグリスノートが息を吐いた。
「ならいいけどよ。俺は夜が明けたらオルタードんとこ行って、こいつを紹介するつもりだからな」
ぎくりとする。やはりグリスノートはそのつもりなのだ。
「オルタードの前で結婚したふりをするってこと?」
「俺はマジにしたいんだが、このナイトたちがうるせーんだよ」
「ナイトたちって……」
リディの視線がゆっくりとラグに向かい、彼と目が合った瞬間その顔が真っ赤になるのを私は見てしまった。
(リディ?)