My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
 そんな彼女に何か言わなければと思うのに、やっぱり言葉が出てこない。手のひらにじっとりと汗をかいていた。――と。

「へぇ?」

 グリスノートがその口端をにぃっと上げた。

「道案内も出来て用心棒にもなるたぁ、秘境探検にぴったりじゃねぇの」
「え?」

 小さく声が漏れてしまっていた。

(用心棒?)

 グリスノートはグレイスの嘴の上を撫ぜてやりながらまたどっかりと椅子に腰を下ろした。

「途中の海域に、ちと厄介な連中がのさばっててな」
「! 兄貴、まさか」

 それを聞いたリディがびっくりしたように声を上げた。
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