My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
グリスノートはじっとしていられない様子でグレイスと共に船へと向かった。お前らも夜が明けたらすぐに来いよ、そう言い残して。
リディは彼が家を出て行ってすぐ、力なく椅子へ腰を下ろした。
「リディ、大丈夫?」
「……なんか、色々いきなり過ぎて」
「そうだよね」
私も、ここ数時間のうちの出来事に驚きっぱなしだ。
リディにしてみたら急にお兄さんが私を嫁だと言い出して、家に戻ったらすぐにでも旅立ってしまいそうな勢いなのだ。
「その術士の海賊というのは手強い相手なのか?」
セリーンが訊くと、リディはどう答えていいか迷うように「うーん」と唸ってから口を開いた。
「手強いっていうか、兄貴とちょっと因縁があってね」
「因縁?」
何やら不穏な言葉が出てきて首を傾げる。
するとリディは苦笑して続けた。
「元々は同じブルーの仲間だったの」
「え!?」
「それが、ちょっとしたことで兄貴と対立して数人の仲間引きつれてイディルを出て行っちゃって。そしたらいつの間にか向こうも海賊団を作ってて兄貴たちの仕事の邪魔をしてくるようになったの」