My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
それを聞いて驚くと共にリディたちが術士に対して偏見が無かったわけがわかった。
(身近に術士がいたからなんだ)
「そういうわけか」
セリーンも納得したように頷いた。
「あっちには術っていう武器があるから、会う度やられっぱなしでね」
重い溜息を吐いたあとで、リディはちらりとラグに視線を向けた。
「だから多分、兄貴あなたのこと相当気に入ってると思うわ」
ラグはしかし、そう言われてもぴくりとも表情を変えない。
リディがそんな彼を不思議そうに見つめて、焦ったそのときセリーンが言った。
「一先ず、今日はここらで休むか。明日オルタードと話をしに行くんだろう? あの様子では話がつき次第即出発もありえそうだ」
私は何度も頷く。
……オルタードさんの前でグリスノートのお嫁さんを演じなければならないのは気が重いけれど、こうなってしまってはもう後にはひけない。きっと船が出るまでの辛抱だ。
それに、今はラグのことが気になった。見ればブゥも心配そうに相棒を見下ろしていて。
(ラグ、大丈夫……?)
そう訊きたくても、訊くことが出来なかった。