My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
26.偽りの花嫁
翌朝、私たちはリディが出してくれたパンを口に入れすぐに海賊船へと向かった。
私は2日ぶりに男装ではなく元の格好に戻っていた。
男装姿のまま家を出ようとしたらリディに「多分、兄貴怒ると思うわ」と渋面で言われてしまい慌てて着替えたのだ。迷ったけれど、帽子も外した。
(お嫁さんのふりかぁ……)
「油断すんなよ」
「え?」
朝日に照らされながら岩山を上っている途中、後ろから声がかかった。
振り返ると、普段と変わらない不機嫌そうな顔がこちらを見上げていて。
「嫁のふりにかこつけて、あの野郎何してくるかわかったもんじゃねぇからな」
「う、うん」
ラグの方はもう大丈夫なのかな……そんなことを思いながら頷くと、その眉間の皴が更に増えてしまった。
「本当にわかってるか?」
「わ、わかってるよ。気を付ける」
そう答えながら、いつも通りの彼に少しほっとする。
(大丈夫そう……?)