My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「カノン大丈夫ー?」
そのとき声が掛かって前に向き直ると、セリーンの更に向こう、リディが大分先の方から手を振っていた。
「もうすぐ頂上よ。頑張ってー!」
「はーい!」
手を振り返して私は再び階段を登り始める。――でも、そのときふと気になることを思い出し、もう一度後ろを振り向いた。
「そういえば昨日、リディに引き止められたって言ってたけど」
「あ?」
「そのときに、リディと何かあった?」
「は?」
昨夜のリディのあの反応が、ちょっとだけ気になったのだ。
(リディ、ラグを見て真っ赤になってた……)
ラグははじめ怪訝そうな顔をしていたけれど、何か思い出したのか急にバツが悪そうに私から視線を逸らした。
「……少し、強い物言いをした」
「え」
――強い、物言い?