My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「あぁ。――おい!」
「あ、はい!」

 呼ばれて私は背筋を伸ばし返事をする。後ろのセリーンと視線を交わしてから私はその部屋の中に入った。
 窓際のベッドに腰掛けていたオルタードさんが私を見てその片目を大きく見開いた。

「俺の嫁のカノンだ」
「ど、どうも。はじめまして!」

 なんと言っていいかわからず、とりあえずそう挨拶して頭を下げる。
 そして恐る恐る顔を上げるとオルタードさんは案の定眉をひそめていた。

「はじめまして……? 昨日セリーンお嬢様と一緒にいた坊主じゃねぇのか」

(ぼ……っ)
 ――坊主!? 確かに男装はしていたけれど……。
 地味にショックを受けていると、グリスノートがこちらに寄ってきて私の傍らに立った。

「あんたの目は節穴かよ。昨日はわけあって変装していただけで、どう見たって女だろうが」

 そう言いながら肩に手を回されて緊張が走る。

「変装ねぇ」

 オルタードさんの鋭い視線が突き刺さる。……笑顔が引きつっていないだろうかと心配になったとき。

「安心しろ。彼女は間違いなく女性だ。共に旅をしてきた私が保証する」
「セリーンお嬢様まで」

 部屋に入ってきた彼女の姿を見て、オルタードさんが姿勢を正した。
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