My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
ラグが私を見た。
「飛ぶぞ。あの王子がこれからユビルスの術士を雇うってんなら構いやしないだろ」
「そうだよね。でも、もしあっちに着いて危なそうだったら私歌うよ。海賊たちが相手ならいいでしょ?」
小声で言うとラグは眉を寄せながらも頷いてくれた。
いつものようにラグが私を抱き上げてくれて、私は彼の胸元をぎゅっと握る。
ふとこちらを見つめるたくさんの視線に気付いて私は慌てて彼らに向かって頭を下げた。
「お世話になりました!」
同時に「すまない、力を貸してくれ」という優しい声が聞こえて。
「――風を、此処に!」
ふわりと風に包まれ私たちは一気に空へと舞い上がった。
ぐんぐん近づいてくる海賊船を見つめながら私は彼女の目立つ赤を探す。
――ラグに、私を頼むと告げたセリーン。
一瞬、もうこれでお別れだという意味に思えた。
(違うよね? セリーン……)
知らずラグの服を掴む手に力が入っていた。