My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5

 徐々に治まっていく風の中ラグの舌打ちが聞こえた。セリーンは正座させられ、しかも両手を後ろで縛られていた。その姿を見てカッと頭に血が上る。

 トンと、セリーンの前に軽く着地した私たちを、剣やナイフを持った海賊たちざっと10人ほどが一斉に取り囲んだ。

「その女を追って来やがったのか!」
「気を付けろ、こいつ魔導術士だ!」

 だがそこで海賊たちの顏が怒りから驚愕に変わる。私を下ろしたラグの身体が小さく縮んでいくのを目の当たりにしたからだ。

 歌うなら今だと、私は息を吸う。全員眠らせてしまおうと思った。――だが。

「カノン!!」

 鋭い声が掛かり私は寸前で歌うのを止めた。

「……セリーン?」

 私は後ろを振り向く。――そう、声の主はセリーンだった。
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