My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5

 その後、私たちは船底近くの酷い臭いのする部屋に放り込まれた。
 揺れはそこまで無かったが、この臭いだけでまた酔ってしまいそうだ。鼻をつまみたくても手を拘束されていて叶わず息を止めてみるが結局すぐに苦しくなって諦めた。

 外に見張りをひとり残し他の海賊たちが行ってしまうと、

「すまない」

セリーンがそう私たちに頭を下げた。

「謝られてもな。訳を聞かせろよ、訳を」

 胡坐をかいたラグが不機嫌なのを隠そうともせずに訊く。

「……」
「セリーン?」

 頭を下げたままなかなか口を開こうとはしないセリーンに声を掛ける。
 本当にどうしてしまったのだろう。小さなラグが目の前にいるのに視線を向けようともしないのも気になった。――と。

「……海賊旗の紋章だ」

 セリーンが視線を下にしたまま小さく呟いた。
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