My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
(暗い部屋で良かった)
「なぜあれが不吉とされているのか、不思議に思ったな」
「そうか……。あ~クソッ、俺も一度でいいから聴いてみてぇなぁ!」
本気で悔しそうにグリスノートは天を仰いだ。
――この人は、私がセイレーンだと知ったらどうするのだろう。
そんなに歌が好きなら、もし今私が歌ったら、この縄も解いてくれるだろうか……。だが。
「これも全部、あの銀のセイレーンのせいだ」
その憎々し気な声に危うく肩が跳ねそうになる。
「どれほどの美女か知らねぇが、またこの世界に現れたってんなら俺のこの手で殺してやりてぇぜ」
ぐっと握り潰すように拳を握った彼を見て、顏の熱が一気に引いた。
――絶対に、この人の前では歌えない。